極彩色アリス

何も言わない男の人を少しだけ見つめる。
ちょっと首をかしげた後、視線を感じた。
【早く行け】…。
そう言われたような気がして踵を返して階段を降りる。
ふと思い立ち、足を止めて振り返る。
顔をあげて目を合わせた。

「そう言えば、名前は?」
『……!』
「無いわけじゃないでしょ?」

男の人は少し戸惑ったような反応を見せた。
抵抗があったのか、迷って悩んだあげく小さく声を出した。

『紋白…』
「モンシロ…?」

名前を復唱すると頷いた。
白蝶と戯れていた手をひらひらと振られる。
もう行けと言っているようだ。
モンシロ…。
不思議な雰囲気のモンシロを少し見てから階段を降りていく。

部屋の前で乱暴にノックしながら怒鳴っている憤怒に声をかける。
適当に誤魔化して暴挙を止めさせた。

憤怒が歩き出し、その後を追う前に階段を見上げた。

…踊り場に紋白の姿はなかった。


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