レオニスの泪





ーそうしたら。





下ろした掌に、無意識に力が籠もる。




「祈さん?」




そうしたら。

神成とは関わりが無くなってしまう。

神成とは、もう、終わり。


熱を出したって、何だって、神成は、私が患者だから、助けてくれた訳で、診察に来なくなっても、患者だから心配してくれてた訳で。


いいんだけど。


別にそれが普通で良いんだけど。


当たり前だし、むしろ、私の生活からは、神成がいなくなってくれて、清々するはずなんだけど。



なんで。



「あ…すいません…ちょっとぼーっとしちゃって。えっと、治療について、ですよね。」



笑えてる。大丈夫だ、ちゃんと笑えてる。

顔の筋肉が動いている。





「何か悲しいの?」



「え?」



「何に、動揺したの?」





黙れ、精神科医。


咄嗟に口を衝いて出そうになる程、憎たらしい分析力。



「治療するのは、嫌?」



あぁでも、終わりにしなくちゃ。


そんなこと、してる暇ないんだから。


幸いにも、我が家は目と鼻の先にあるんだし。




< 151 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop