レオニスの泪
ーそうしたら。
下ろした掌に、無意識に力が籠もる。
「祈さん?」
そうしたら。
神成とは関わりが無くなってしまう。
神成とは、もう、終わり。
熱を出したって、何だって、神成は、私が患者だから、助けてくれた訳で、診察に来なくなっても、患者だから心配してくれてた訳で。
いいんだけど。
別にそれが普通で良いんだけど。
当たり前だし、むしろ、私の生活からは、神成がいなくなってくれて、清々するはずなんだけど。
なんで。
「あ…すいません…ちょっとぼーっとしちゃって。えっと、治療について、ですよね。」
笑えてる。大丈夫だ、ちゃんと笑えてる。
顔の筋肉が動いている。
「何か悲しいの?」
「え?」
「何に、動揺したの?」
黙れ、精神科医。
咄嗟に口を衝いて出そうになる程、憎たらしい分析力。
「治療するのは、嫌?」
あぁでも、終わりにしなくちゃ。
そんなこと、してる暇ないんだから。
幸いにも、我が家は目と鼻の先にあるんだし。