レオニスの泪
「あら!それはダメよ、森さん!」



ーお。



完璧に私と神成を無視して会話が進んでいくが、笹田の助け舟に僅かに感動した。




「え?なんでですか?」




駄目出しされた森は、きょとんとした顔で、笹田に訊き返す。太い眉がリアクションをいちいちオーバーにしている気がする。




「だって、葉山さんは、委託会社の人がツバつけてるから。」


「え、マジっすか??」



流石に言葉を失った。

数秒前に、笹田を見直した自分を呪いたい。



「ー何言ってるんですか、笹田さん。そんな誤解を招くようなこと言わないで下さいよ…」



やっとのこと、それだけ言うが。



「良いじゃない、木戸さんが葉山さんのこと好きなのは確かだし!だから、神成先生私なんかどうですか?」




「笹田さん、それはちょっと冗談キツくないですか?」




「冗談じゃ無いわよ~」





二人の会話は、どうでも良い方へと、何事もなかったかのように進んで行くけれど。



沈黙したままの、神成の表情は穏やかで。



恥ずかしさで、恐らく赤くなってしまった自分の顔と、大分距離があるように感じた。



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