レオニスの泪



やがて。



「…弱ったな」



神成は呟くようにそう言うと、身を翻した。



「えっ?」


ー何、それ。答えになってない。



つられて私もその後を追うようにして、歩を進める。



「あの、、ちょっと…待って」



別段早歩きなわけではないのだが、背の高い神成の一歩は、私の一歩とは違う。彼が一回足を動かせば良い所を、私の場合二回は動かす必要がある。


急速に回復し始めた天気は、雲の切れ目から月明かりまで覗かせていて、風にさざなみ立つ水溜まりが不自然な程だ。




「申し訳ないけど…、なんか僕は祈さんが心配なんだよね。」



神成の悩んでいる様子が窺えるような。




「ー理由というなら、それが理由かな。」




一語一句丁寧に紡ぎ出された言葉。




真正面から見たって、読めない彼の心情は、背中から見たって、わかるはずもない。




だけど、何故か、嘘偽りがないと、信じてしまう自分がいる。



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