レオニスの泪
岩崎は、朱李とは別れた方が良いと僕に勧めた。
『あれだけ推しといて、勝手な事言ってるのは分かってる』
『でもアカは、この先絶対にお前の足を引っ張る。』
それでも僕はその勧めに従わず、研修医二年目、馬鹿と言われるタイミングで朱李に結婚を申し込んだ。殺人的な忙しさだった為に、手続きはほとんど朱李に任せて、婚姻届を出したのは真夜中。
結婚については、朱李の実母にだけ連絡して、合間を縫って挨拶に行ったが、それも非常識な時間で迷惑をかけた。
勿論式を挙げる暇も余裕もある訳がなく、生活も以前とはなんら変わらないけれど、それでも、朱李が安心出来るのなら、僕は何でも出来る限りの事をした。
だけど本当に。
本当に僕は。
時間が無くて。
後から悔やんでも意味がない事はよく理解してるけど。
彼女を一人にすることが多くて。
けど、朱李は笑顔が増えて、いつもいつも笑ってくれたから。
これがずっと続くような錯覚に陥って、現実を直視していなかったんだ。