レオニスの泪
「明らかに嫌がらせなんだけど、レポートの書き方がなってない!って怒られてて。でもその子まだ入学したばっかりだったから、言われてる事も分かんないし今にも泣きそうになっちゃって。そしたら、通りがかった伊織が、『先生こそ、マナーがなってないんじゃないですか』って言ったの。」
詳しく説明してもらっても、全く思い出せないが、恐らく五月蝿かったんだろうと思う。
「実はその子こそ、私で。」
「え。」
今度こそ驚いた僕は、目を瞬く。
「私、怒鳴られると、色々思い出して足がすくんじゃって、、気も動転してどうしようもなくなっちゃうの。でも、大学に入ったばっかりで、そんな所誰にも見せたくなかったし…あとちょっと遅かったら、私過呼吸で倒れて、色々嫌になって、大学辞めてたかも。」
それから、と朱李は視線を空に移して続ける。
「いいなぁ、私もあんな人になりたいなぁって。力とか汚い言葉とかで抑えつけるんじゃない、強さを持つ人。」
つられて見上げれば、流れ星がひとつ落ちたのが見えた。
「伊織は私の一番星。」
初めて輝いた星なんだと、恥ずかし気も無く言ってのける朱李の横顔に、僕がキスをすると、絡めたお互いの指にはまるリングが合わさって小さく音を立てた。