レオニスの泪


「……出来たら、少し話がしたいんだけど…」


私の気配は、だだ漏れだろう。

だけどこんな状態で、神成と顔を合わせるなんて、不可能に思える。

だから、神成の要望には可とも否とも言えない。

出来るなら、返事をしない事で、ここには居ないと勘違いして欲しい位だったが、神成は、私がここに居ると確信しているに違いなかった。


彼が落ち着いてきた呼吸を、今度はふ、と溜息のように落としたのが聞こえた。


「……………………ごめん。」



玄関の電気がゆらと揺らぐ。


遠退いて行く、階段を下りる足音を耳にしながら。

電球がもうすぐ切れるんだろうと、頭の隅で思った。


神成の、ごめん、については、後からじわじわと理解出来てきて、何に対してのごめんなのかー


分かったけど、やるせなくて、受け入れられなくて。

数ヶ月間を思い返せば返す程、自分が無様で仕方なくて。


神成に、寄りかからないよう抵抗してきたのに、思い切り、頼りにしてしまっていた挙げ句、恋心を抱いた事実が、情けなかった。
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