レオニスの泪





「ママー…なんかあったの?」


翌朝。

一睡も出来なかった状態で、朝ご飯の支度をしていると、慧が心配そうに覗き込んできた。

脚に纏わりついて、ぎゅう、と抱き付いたり離れたりする。


「なんもないよー」

疲れた心を持て余しつつ、昨夜の事は考えない様にして、フライパンの中にあるオムレツに集中しようとする。

なんとかモチベーションを上げる為に明るく振る舞っているつもりなのに、意気消沈している事が息子にモロバレってどういうことだ。

情けなさ過ぎる。


「じゃ…お風邪、ひいたの?」

「ううん、そんなことないよ!元気だよー」

手を忙しなく動かしながら、答える。

「じゃぁ、、、お腹が痛いとか…」

「痛かったら、起きれないでしょ。さ、ほら!早く着替えて着替えて!」

「うーん…」


煮え切らない返事をしつつ、慧は私から一旦は離れて、椅子の上に出されている洋服に着替えに向かった。

ー仕事休みで良かった。

密かに安堵していた。

もし仕事だったとしたら、慧の事を怒鳴っていたかもしれないと思う。

それ位、追い込まれていた。



< 327 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop