レオニスの泪
定刻通り、神成はアパートの前まで迎えに来た。
冷え込む夜だった。
「けーい、行くよー!」
例のごとくチャルダーマンに夢中になっている慧も、いつもとは違って、襟付きのシャツを着せた。
玄関の電気だけ付けっ放しにして、外に出ると。
寒いから、運転席に乗っていてくれれば良いのに、神成は外に出て待っていた。
ダウンを着た彼の服装は、ラフなもので、安心する。
「こんばんは。戻ってきました。」
「こんばんわぁ!」
慧の手を引っ張りながら階段を下りきると、神成と対峙する格好になって、慧が元気よく挨拶する。
「久しぶりだね、慧くん。挨拶できて偉いね。今日はよろしくね。慧君はここに乗ってもらえるかな?」
神成はそんな慧の頭をわしゃわしゃと撫でて、後部座席に乗せた。
同時に車内の温められた空気が流れてくる。
「――おかえりなさい。今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ。家の事、色々ありがとう。さ、乗って。」
「――はい。」
眼鏡を掛けていない、神成の笑顔に、いちいちドキドキしながら、私は促されるまま、慧の隣に座った。