レオニスの泪
運転する神成の背中を、後部座席から見つめていると、抑え込んだ想いが、むくむくと頭をもたげてきて、胸が苦しくなる。
――会話……会話しないと!
沈黙が支配するのが怖くて、会話の糸口はないかと探す。
「あの……京都はいかがでしたか?」
隣で慧が私の髪をいじっているが、そんなのも気にならない。
「中々良かったよ。っていっても、もう何回も行ってるから、本当は飽きちゃったんだけどね。」
「そうなんですか。何度も……」
そう言われて、ふと、「あかり」さんとも、行ったのだろうかという思いが過ぎる。
「おかげで詳しくなったけど。知り合いも多いし。」
軽く笑いながら、ハンドルを回す神成。
「そうですか……」
「ま、今回は仕事だからね。そんな事より、慧君は嫌いな物とかある?」
徐に神成が慧に訊ね、すかさず慧が。
「アフロ!ピーマン!」
と答えた。
「……アフロ……?」
何のことだろうと、束の間考えてくれたらしい沈黙の後で、神成が首を傾げる。