レオニスの泪
神成が連れて来た店は、こじんまりとした割烹料理店を思わせる外観だった。
玉砂利の敷かれている店先の脇には、打ち水をするための柄杓と、水の入った石が置かれていて、万両の赤い実が揺れている。
白熱灯のような、暖かい太陽のような灯りが、店の臙脂色の暖簾を照らしていて、入り口は引き戸になっていた。
一見、古民家のようでもある。
――うわぁ。
「うわぁ、たっかそぉぉ」
「あ、ばか。」
私も思った事を、慧が真横で口走り、ぴちりと叩く。
「そんなことないから、大丈夫。緊張しなくていいからね。」
一歩先を歩いていた神成が、振り返って、安心させるように笑んだ。
「すいません……」
恥ずかしい気持ちでいっぱいで、縮こまる私。
そんな親の気持ちを知らない慧は、能天気な顔してへらへらしている。
――ううっ慧。もうお願いだから黙って!
強く願うが、きっとこの願いは届きはしないのだろうと確信している。
「こんばんは。」
カラカラ、と引き戸を開けた神成が、暖簾をくぐると同時に声を掛けた。