幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
「くそったれ!あんな旗ごときに、怯むんじゃねえ!
あれがあいつらの偽造したものでないと言い切れるか?
お前たちは、天子様のために働いていたのか?」
地鳴りのような総司の大声が、隊士たちを打ちつける。
「俺たちは、俺たちの志は、誠の旗にかけてきたんだろうが!
あんな偽物じゃねえ。本物の誠は、俺たちの中にある!」
総司はそう言うと大股で歩き、隊士が取り落していた誠の旗を拾い上げた。
赤地に、白いだんだら模様と『誠』の一文字が染め抜かれた、あたしたちの旗。
「そうだ……」
「俺たちは、女子供を……徳川の民を守るために……」
ひとり、またひとりと隊士たちが立ち上がる。
すると総司は誠の旗を掲げ、叫んだ。
「諦めるな!俺たちの誠を貫け!」
返事をするように、「おう!」と叫ぶ隊士たち。
先陣を切る総司のあとから、あたしたちと彼らは敵軍に突っ込んでいった。