怖がりな君と嘘つきな私
「地球がフルボッコされて、トム·クルーズはどうなったの?」

「馬鹿げた映画だった。侵略者は最後あっけなくおだぶつ。トム·クルーズは助かった。クソだ。」

「助かったなら、良かったじゃん。」

「全然よくない。」

映画を思い出したのか、ナルは小さく震えている。

その姿は、あの薄暗くて煙草臭いライヴハウスのステージでパワフルに歌っているのと同じ人間とは思えないほど弱々しくて、ナルのこんな姿を知っているのが自分だけだという優越感に思わず浸りそうになってしまう。


「なんで?」

「怖かったのは、フルボッコされるからじゃない。」


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