怖がりな君と嘘つきな私
「軍人とかさ、いかにもムキムキのやつが人を殺すのはそんなに怖いことじゃないんだ。怖いのは、普通の人間がさ、自分や誰かを守るために、あっさりとそういうことをしちゃう、ってことなんだ。」

もうすっかり暗くなった部屋の中はしんと静かだ。
心なしか、ナルの声は震えている。
ナルを胸に抱いて、かける言葉を探しながら、そのナルが見たという映画のワンシーンを想像してみる。

「普通の人間が一番怖いよ。花穂の周りにもいるだろ?毎日、きちんと自分で弁当つくってきてる人とか。ちゃんと赤、緑、黄色って彩りを考えてたりする弁当だよ。そういう普通の人間。出張で福岡に行ったら、とおりもんを会社の人数分ちゃんと買ってきたりする人とか。そういう普通の、いやむしろいい人が、極限になったら豹変するんだ。」

その映画を見ている時に、私が一緒にいれば良かったのに。
そしたら、見るのやめようって、一緒にお風呂にでも入ってあげたのに。

せめて、見終わってすぐに、うちに来たなら良かったのに。

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