僕は悪にでもなる
復讐
「君が涙のときには~ 僕はポプラの枝になる~
孤独な人につけこむようなことは~言えなくて~
君を泣かせたあいつの~正体を僕は知ってた~
ひきとめた僕を~ 君は振りはらった 遠い夜~」

と静かに歌い始めた。

「ここにいるよ~ 愛はまだ~
ここにいるよ~ いつまでも~」

繰り返し繰り返し歌う。

「空と君とのあいだには 今日も冷たい雨が降る
君が笑ってくれるなら 僕は悪にでもなる」

涙をこらえて。歌い続けた。
そして眠った。

おきた俺はじーとじーと何もいわずに虹美を見ていたころ
ドアが開き、直樹が入ってきた。

「大丈夫か」
複数の業者の人と、おばちゃんも入ってきた。

そして虹美の最後に見る素顔が、体が、灰になった。

遺骨を抱えて部屋に戻った俺は、
正気を保つためにまた、歌いだす。

「君ーと僕との間にはー。今日も冷たい雨が降るー。きみーが笑ってくれるなら
僕は悪にでもなるー」

悲歌慷慨しながら、粉々になった虹美の骨をかじる。

虹美の骨を上にあげ寝ころんで。
悲しみから刀光剣影が漂う。
窓から見えるのは虹のない空。

もう二度とかからない虹。
もう二度と会えない虹。
俺は遺骨を戻し、
「ちょっとここで待っててね。」
そう言って外に出た。

ゆっくりゆっくり道をすすんだ。
何も見えない、何も聞こえない。
歌いながら。
「きみーが笑ってくれるなら僕は悪にでもなるー」



着いたのは弁護士事務所

ソファーに腰をかけ、枕を血に染めなんとか息をしている刑事。
机には大金

そしてもう一つ目に入ったのは飾られた日本刀。

俺は刑事に言った。

「いえよ。」

そして目に映ったのは同じ机の上におかれた携帯。

メールが来ている。

「わかりました。」

何に対しての返事なのか。最新の送信メールを確認する。

長々と文章が打たれているが俺の目に入ったのは1つだけ。

そして最新の発信先も確認した。
「かずみさん」
ふいに間違ってボタンを押していまったがすぐに切った。

また死んでいる刑事にむけて声をかける。
「復讐心でなく。私欲のため。我欲のために。
ここまで人は残酷非道なことができるのか。
ここまで人をあざむけるのか。
答えろ。」

「誤解だ。俺は兄貴の言うとおりにしただけだ。殺すなら兄貴を殺せ。
居場所は言うから。。。頼む助けてくれ」

込み上げた暗恨が俺の人格を奪った。

「悪逆無道。」

「ばさっ。」
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