恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
石井がそんな風に自分の放った冗談を撤回すると、古庄は力強くうなずく。
「その通り。賀川先生みたいに可愛い嫁さんを持つと、どんな時でも、賀川先生の傍にいて守りたいと思ってるよ」
「……は?」
今度は石井の方が、古庄の言葉のあまりの甘ったるさに赤くなる。
古庄の言動は、まるで自分の心を語っているかのようで、素直すぎる古庄のこの天然ぶりでは、ごまかすどころか却って墓穴を掘ってしまう。
真琴は自分にかけられたセリフにむず痒くなりながら、焦って石井の腕を引っ張った。
「石井先生。早く大浴場に行かないと。もう生徒たちが待ってるかも!」
「ああ、そうね」
石井は頷いて、真琴と連れ立って駆け出した。
その二人の後姿を目で追い、更に古庄が言葉をかける。
「賀川先生!走っちゃダメだ!!コケたら大変だよ!!」
真琴はピクリと反応したが、古庄に応えることなく、そのまま振り切るように駆けて行った。
真琴を見送る古庄を遠くから見つめていたのは、同じく大浴場に向かっていた佳音だ。
古庄と一緒にいたい…その思いが視線からにじみ出ている。
しかし、旅行中は古庄が一人になることはほとんどなく、そんな古庄に佳音は駆け寄ることさえできず、寂しい思いを抱えていた。