恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



「抱いてほしい」「キスしてほしい」と懇願する佳音に、古庄は、心の底から愛しいと思える人でないとそれはできないと言った。



自分を含めて誰もが憧れる古庄…。
その古庄が、心から愛する人――。


それは、取り立てて美人でもなく極めて平凡な、隣のクラスの担任の真琴だった。



その不可解さは、真琴への嫉妬と相まって、佳音の心をむしばんだ。

自分がこんなに望んでも得られない古庄の想いの全てを、古庄からの抱擁やキス…自分が望んでやまなかった行為の全てを、真琴が独り占めしていることが憎らしかった。


…だけど、真琴は結婚していて、そのお腹には新しい命も宿している…。
その事実は、いくら学校を休みがちな佳音でも、知っていることだった。



佳音は弾かれたように、家に帰る住宅街の夜道で立ち止まった。

その気づいてしまった真実であろうことに、愕然として宙を見つめる。




――…賀川先生の結婚相手…、お腹の赤ちゃんの父親は…、古庄先生だ……




佳音の頬に、誰に見せるためでもない、悲しみと諦めの涙が零れ落ちる。


どんなに恋焦がれて、どんなに追い求めても、初めから古庄は絶対に手が届く相手ではなかったのだと、ようやく佳音は悟った。



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