恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



「…私はね、世界史を選択してるから、賀川先生の授業を受けてるんだけど、明るくて楽しくて、いつも生徒のことを真っ先に考えてくれる本当にいい先生なの。だから、下手に騒いで、古庄先生だけじゃなく賀川先生も困らせたくないから…」


「先生たち…ちゃんと真剣に愛し合って、結婚したんだと思う。……だから、佳音ちゃん。古庄先生のこと好きで、辛い気持ちは解るけど……、先生たちをこのまま黙って見守ってあげて……」



そうやって必死に説得を続ける女の子たちの目からも、いつしか涙がこぼれていた。

それほど古庄のことが好きで、だからこそ古庄には幸せになってほしい…。本気でそう思っているからこそ、流れてくる涙だった。



あの二人が、心の底から愛し合っていることは、佳音が一番知っている。

目の前で見たあのキスは、ただ「キスをしていた」と言えるものではなく、言葉では語りつくせない意味が込められていた。思い出す度、思わず体が震えてしまうほど、真剣な想いに満ちていた。


佳音は目を閉じ、両手をギュッと胸のところで握った。
何かに耐えるように、自分の中に渦巻く感情や複雑ないろんなものを、ぐっと力づくで抑え込んだ。



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