恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「森園……。石井先生との勉強が終わったら、来なさい。今日は送って行くから」
古庄が佳音に耳打ちする。
佳音は少し気色ばんだだけだったが、古庄はほのかに微笑んで、それを同意の意味に受け取った。
石井と連れ立って職員室を出て行く佳音に、終礼から戻ってきた真琴がすれ違って、気に留める。
真琴の視線が、ずっと佳音をたどるのに気が付いて、古庄が声をかけた。
「今日は…、石井さんに個別指導を頼んだんだよ」
真琴は古庄と目を合わせて、少しホッとしたような表情を見せる。
佳音のことは気がかりだが、古庄が彼女と二人きりになるのは、もっと気がかりらしい。
「これからは石井さんだけじゃなく、数学や国語の先生にも指導してもらうよ。昨日あんなことがあったけど、『絶対に見放さない』ってことだけは、森園に示しておきたいんだ」
「……そうですね」
真琴は古庄の言葉を聞いて、昨日の出来事と佳音の心情を推し量りながら、古庄の考えを肯定するように口角を上げた。
教師という仕事をしていると、時には生徒と摩擦が起きることもある。けれども、絶対に生徒を見放したりはできない。
たとえどんなことがあったとしても、それをしてしまったら、教師失格だ。