恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
個人的なマイナスの感情は胸の内で上手く散らして、それを乗り越えて、どの生徒も同じようにその成長を期して指導を続けなければならない。
それは、学力だけではなく、心も成長できるように…。
真琴がそんなことを考えながら、机上のものを整理し、帰り支度を始めると、
「…もう、帰るのかい?」
と、古庄が読み始めた新聞から目を上げて、真琴に確認した。
まだ、勤務時間は終わっていない。古庄の疑問は当然だった。
「今日はこれから産科の病院へ、検診に行って、そのまま帰ります」
「そっか…。赤ちゃん、順調だといいな」
古庄がそう言って幸せそうに微笑むと、真琴はその笑顔の絶妙さに思わず見とれ、顔を赤くし、ほのかに頷いた。
そんなやり取りに、向かいに座る戸部がずっと耳を澄ましていたが、堪えきれずに視線を二人へと向けた。
「……?」
「…どうしました?戸部先生?」
と、戸部は二人から同時に見つめ返されて、逆にうろたえてしまう。
職場の同僚として、普通の会話をしているつもりなのだろうが、仲睦まじい二人に当てられて、戸部は顔を赤らめる。
この二人の秘密を知っていながら、知らないふりをするのはとても難しかった。