最後の恋の始め方
 あれから初めての冬を迎えている。


 何もかもが明らかになってしまった、あの夜から……。


 理恵は走ってこの家を後にしてから、一度も佑典には会っていないとのこと。


 翌日、理恵のほうからメールをしたらしい。


 「一度、全てを白紙にしましょう」とだけ書いて。


 程なくあった、佑典からの返信は……。


 「俺が悪かった。許してほしい。いったんリセットして、お互いを離れて見つめ直そう」


 ……そんな言葉を残して、数日後。


 佑典は赴任先である、東南アジアの某国に旅立っていった。


 理恵は一人、ここに残って新しい生活を始めた。


 その春から大学四年生。


 卒業論文の準備や就職活動で慌しい一年。


 理恵は卒業後すぐに佑典の元へ行く予定だったで、就職活動の準備を全く始めてなかったのだ。


 バブルの頃ならばまだしも、バブル崩壊そしてリーマンショックを経た現代においては。


 この時期になって焦っても、大企業はほぼ手遅れ。


 公務員系統も、本気で志望する人は大学入学と同時に準備を始めているから、今から慌てても……。


 教員採用過程も三年次から、必修科目の授業を取っておかなければならなかったのに、理恵は受講していなかった。


 だから受験資格もない。


 卒業後の進路を見失った理恵は、途方に暮れてしまっていた。
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