最後の恋の始め方
 「あの男、僕からあれこれ情報を引き出して。佑典が理恵とよりを戻す可能性が低いと判断したら、本腰を入れて理恵を手に入れようと動き出すかもしれない」


 テレビ画面を見つめながら、僕は理恵に告げた。


 じっくりと番組を鑑賞しているわけではない。


 もはやただ眺めているだけ。

 今後起こり得る全ての可能性、というか危険性を思案しながら。


 「……考えすぎじゃないのですか」


 僕だってそう思いたかった。


 今後理恵とあの男の間には、ずっと何も起こらないと信じていたかった。


 だけど残念ながら、僕の予感は間違いなく当たるだろう。


 そう遠い未来のことではないはず。


 「僕の予測が正しかったって、いずれ理恵もはっきりと分かるはずだよ」


 「……」


 理恵は「そんなことあるはずがない」と、言い返すこともできず黙ってしまった。


 「世間体や先輩後輩の間柄に気を遣うあまり、つい流されて、取り返しのつかないような事態を引き起こしちゃだめだよ……」


 取り返しのつかないこと、すなわちそれは。


 「どうしてもあいつが引き下がらなかったら、僕の名前出してもいいよ」


 甘くキスをしながら、理恵に提案する。
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