最後の恋の始め方
 「あ。俺はどうせ家に帰っても待つ人いないし。理恵ちゃんも……かな」


 その言葉の意味は、彼女が遠く離れているということなのか、すでに別れたということなのか、判別が付かなかった。


 和仁さんがいないということもあり、女友達と飲みに行く感覚で、私は山室さんとご一緒した。


 「ここですか」


 飲み屋、と言われたので、居酒屋風の場所を想像していた。


 実際に到着してみると、華やかなカクテルバーだった。


 「好きなもの頼んでいいよ」


 メニュー表を手渡されて、ちらっと見たところ。


 「クレオパトラの涙」だとか、「マリー・アントワネットの吐息」など、一見しただけではどんな原材料だか解らない表記。


 「山室さんのお勧めのもので」


 「苦手な種類とかある?」


 「いえ、特には」


 すると山室さんは、よく解らないネーミングのものを私にオーダーした。


 それも確か歴史上の人物の名前を拝借したもの。


 オーダーを受けて店員が、シェイカーというのだろうか、専用器具を大きく振り始めた。


 やがてそこから、ピンク色の淡いカクテルがグラスに注がれた。
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