最後の恋の始め方
 「山室さん、佑典と結構メールで交流してるんですね」


 それとなく探りの第一矢を放ってみた。


 「そんなでもないよ。互いにかなり多忙だし。週に一回、近況報告のメールをちょこっとする程度だよ」


 山室さんは大学卒業後、北海道では最大規模の銀行に就職した。


 このご時勢、我が大学の卒業生でさえ、就職難が続いていて。


 特に文学部系統は苦戦続きで、山室さんみたいに大手銀行に就職できるのは、極めて恵まれた部類だった。


 しかし仕事は忙しく、外回りもあり、帰宅できるのは連日八時過ぎだと話していた。


 「理恵ちゃんは、佑典とは連絡取っていないんだっけ?」


 「はい、いろいろありましたから」


 「そっか……。あいつも教師としての仕事と、課外活動で楽器の指導をしたりで、多忙らしいね。その分充実した毎日のようだけど」


 「それは……幸いです」


 喧嘩別れしたわけでもないにもかかわらず。


 私は白紙撤回を申し出たあの日以来、佑典とは連絡を取っていない。


 取れずにいる。
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