最後の恋の始め方
 「エンジンかけてくる」


 なかなか出かけない和仁さん。


 このままだったら山室さんと鉢合わせるんじゃないかと心配になってきた頃、ようやく席を立った。


 事務室からガレージまでは距離があって、エンジンスターターを押しても和仁さんの車のエンジンはかけられない。


 そこで玄関先まで出向いて、あらかじめエンジンをかけておく。


 出発前にエンジンをかけて、車を暖めておかないと、真冬日の車内は寒すぎる。


 ハンドルも凍りつきそう。


 和仁さんが廊下へと出て行って、私はふと壁に架けられた時計を目にした。


 あと10分ちょっとで山室さんが到着するはず。


 和仁さんは5分後くらいには出発するので、鉢合わせないで済む。


 ……と思っていたのに。


 「理恵。××銀行の男の人が、理恵を訪ねてきてるけど」


 「えっ」


 私は絶句してしまった。


 山室さんが予定よりも、10分以上早く到着してしまった。


 そして玄関先で、和仁さんと遭遇……。


 「あ、あの方、私の大学の先輩です。カレンダーを届けてくれたようで……」


 自然と口調がぎこちなくなってしまう。


 とりあえず席を立ち、玄関で待っている山室さんの元へと急いだ。
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