最後の恋の始め方
 「ありがとうございます」


 カレンダー二本を受け取る。


 本来ならば中の客間にお通しして、お茶でも振る舞いたいところだけど。


 まだ和仁さんがいるので、それは避けたかった。


 何とか玄関先で帰ってもらおうと、お礼だけして終わらせようとしたところ……。


 「寺本。そちらの方は?」


 奥から和仁さんが出てきた。


 仕事場と住居は玄関と廊下も共通で、奥で左右に分かれている。


 「あ……、先生。この方は大学時代の先輩の、」


 人前では和仁さんは私を名字で呼び、私は「先生」と呼ぶようにしている。


 「はじめまして。私はここの責任者です。あたなは寺本の先輩にあたるそうで」


 私が山室さんの紹介をする前に、和仁さんは山室さんに挨拶をしていた。


 普段、面識のないセールスマンなどの前には、姿を見せることはないのに。


 「はじめまして。……ではあなたが、佑典くんのお父さまでらっしゃいますか」


 「そうですよ」


 「あ、私は学生時代、佑典くんとは親しくさせていただきまして。非常にお世話になっていました」


 急に現れた和仁さんに驚き、山室さんは深々とお辞儀をした。
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