最後の恋の始め方
 「ちょっと、何を……!」


 抱き上げられ、空中に浮かんでいる私は和仁さんに訴えた。


 「だからお仕置き」


 「降ろしてください。こんな、」


 「あと何秒かで、ご希望通り降ろしてあげる」


 「それは……」


 聞くまでもなかった。


 寝室にそのまま連れ込まれ、少し乱暴に降ろされたのは、ベッドの上。


 「やめてください」


 「どうしてそんなに反抗的なのかな。言われた通り、降ろしてあげたのに」


 「だからってこんな……」


 私は逃れようとしたけれど、上から強い力でのしかかられて動けなかった。


 「あの、私。テーブルにお鍋の準備をしたままで……。これから召し上がりませんか」


 とっさに逃げるための口実を見つけ出した。


 「要らない。明日にして。今はこうしていたいから……」


 強く抱きしめられながら、首筋をなぞる唇を感じた。


 「だめです。野菜も出しっぱなしだから。乾いちゃいます」


 このままだと身動きが取れなくなり、思う壺。


 何とか逃れようと、あれこれ理由付けしてみたものの。


 「乾いているのは、僕も同じだけど」


 聞く耳を持たない。
< 51 / 162 >

この作品をシェア

pagetop