最後の恋の始め方
 「この当時はデジカメなんてなかったから、撮影はすべてフィルムで」


 すでに若手写真家として、僕は活躍し始めていた。


 それゆえ普通の人よりは、かなり高性能なカメラや高感度フィルムを所持していた。


 「ピラミッドの内部って、フラッシュ禁止なんじゃないですか」


 次に内部の画像に切り替わったのだけど、肉眼で見られるような光景が記録されているので、疑問に思った理恵は尋ねてきた。


 「禁止だよ。だから高感度フィルムで撮影したんだ」


 一般の人は感度100とか400程度を用いるのが普通。


 僕は1600とか、入手できればそれ以上のものでも撮影していた。
 

 「飛行機の中に持ち込む際は、紫外線など有害な光線を遮断するために専用パックで保管したり、あれこれ大変だったよ」


 しばらくピラミッド内部の画像が続いた。


 玄室に向かう廊下は、理恵が想像していたよりかなり急だったようで。


 「かなり体力を要しますね」


 「若いうちに訪れたほうがいい場所だよ。だからこの機会に……一緒に行こう」


 理恵をそっと抱いた。


 さっきから素肌にタオルを巻いただけだったので、抱きしめると少し冷えていたものの、僕の熱と同化して暖かくなった。
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