最後の恋の始め方
 にび色のエジプトの空の画像が続いた直後のことだった。


 「!」


 次の画像が現れた瞬間、僕は思わず飛び上がりそうになった。


 そこにあるのは、ラクダに乗る観光客の写真。


 真ん中でピースサインをするのは、まだ十歳くらいの佑典。


 屈託のない笑顔が胸に痛かった。


 この頃の佑典はまだ、僕のレンズに向かってこんな無邪気な笑顔を見せていた……。


 ただ今問題なのは、佑典ではない。


 佑典の背後にいる女。


 ラクダに佑典と一緒にまたがり、背後から抱えるように手綱を手にしている。


 佑典によく似た感じの目鼻立ちで、年の頃は30代くらい、さばさばした感じの髪の短い女性。


 つまり……僕の前の妻。


 「ごめん」


 そうとしか言えなかった。


 理恵がどうしていいか分からずにいるうちに、画像を次のものに切り替えてしまった。


 その先は荒涼としたサハラ砂漠の画像が延々と続き・・・佑典とその母親である、僕の前の妻の画像はそれ一枚きりだった。


 なぜここに残っていたのだろう。


 理恵の目に触れないよう、妻の写ったものは別の場所に保存しておいたはずなのに。
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