最後の恋の始め方
 「エジプト旅行は全部で何泊だったんですか」


 「移動中の機内泊を除いたら、五泊くらいかな」


 理恵は動揺を抑えようとしているのか、いつもより口数が多く僕に質問をくり返す。


 「他にどんな所を観光したんですか」


 「次の日はルクソールまで移動したよ。古都テーベと言ったほうが分かりやすいかな」


 「ツタンカーメンとかの時代に、都があった場所ですよね」


 「そう。カイロからは数百キロあるので、翌朝は飛行機での移動のため、朝三時に起きなければならなかった」


 「三時! 過酷な日程ですね」


 「飛行機の時間とかがあったからね。僕も佑典もなかなか起きなくて、怒ったあいつは」


 「……」


 また会話に妻の存在をほのめかしてしまった。


 平然を装う理恵が、無理をしているのが手に取るように分かる。
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