最後の恋の始め方
 「シャワー浴びてくる。ベッドに戻っていて」


 僕はパソコンの電源を消し、理恵を立たせた。


 「そこにパジャマは置いてある。着たくなければそのままでもいいけど」


 「寒いから着ています」


 僕がバスルームへ向かった後、理恵は自分専用のパジャマを着こんで、一人ベッドに潜ったようだ。


 さっきまでシーツを乱すほどに求め合っていたので、冷たい空気が入り込んでこないように整えているのか、シーツを引っ張る音がした。


 僕はシャワーの浴び始めた。


 一人になると余計なことを考えてしまう。


 幼い頃の佑典が見せていた、屈託のない笑顔。


 亡き妻。


 理恵とは違って、短い髪の女。


 僕より三歳年上の、気性の激しい女……。


 初めて目にして、理恵はどう感じただろう。


 存在は知っていても、顔を見たのは初めてのはず。


 佑典によく似た亡き人を、理恵はどんな風に思うのだろうか。


 尋ねることなどできないのに、自問自答を繰り返す。
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