最後の恋の始め方
 恋愛結婚ではなかった。


 理恵にも、一種の政略結婚みたいなものだったって話している。


 亡き妻は恩師の娘で、写真家として成功するために……愛情ゆえではない結婚を選んだのだと。


 愛情のない結婚……?


 そうとは言い切れない。


 愛による結婚ではなかったにせよ、一緒に過ごした年月は、僕はあの人と幸せになろうと努めていた。


 授かった佑典を中心に、いつまでも幸せな家庭を築いていこうと。


 ……佑典には伝わらなかったのかもしれないが、僕は僕なりに最大限頑張っていた。


 彼女は?


 彼女は僕に絶望したまま、息を引き取っていったのだろうか?


 ……。


 そうは思いたくない。


 少なくとも写真の中では、佑典と彼女は幸せそうに微笑んでいた。


 全てではなかったにせよ、楽しかった時間は確かに存在していた。
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