最後の恋の始め方
 「……寝ちゃった?」


 冷たい空気に包まれた寝室に僕は戻った。


 うとうとしていた理恵の肩に触れ、目覚めさせた。


 「……寝てました」


 「起こさないほうがよかった?」


 「いえ……」


 どこか寂しさを感じたのか、ベッドに入り込んだ僕の胸に、理恵はそっと寄り添った。


 「どうしたの」


 身を寄せ理恵に、僕は尋ねた。


 「寒かったんです」


 「寒い? 暖房の設定温度、上げようか」


 「いえ……」


 理恵が寒いとつぶやくのは、決して温度の低さゆえではないだろう。


 なぜならば。


 「まさか……泣いてた?」


 「違います。眠いからです」


 理恵は慌てて顔を枕に埋めた。
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