最後の恋の始め方
 理恵はまだ戸惑っている。


 僕と亡き妻との、途絶えることのない絆の存在を思い知らされて。


 亡くなって、もう手の届かない場所で永遠に輝き続ける人に、自分はどんなにあがいてもかなわないのだと思い込んで。


 「……どうして?」


 理恵はつぶやく。


 どうして自分がこのように僕のそばにいられるのか、それすらも理由が分からず途方に暮れているようだ。


 もしも妻が亡くなっていなければ、自分はここにいられなかったと信じ込んでいる。


 同時に出会っていたとしたら?


 ……僕には答えを出せない。


 「あの人を永遠に失くした時、僕の世界はモノクロームに変わり果てた」


 その当時の僕の作品は、今になってみれば。


 悲しみに沈む心境を表したかのように、発表されるものはモノクロームの作品ばかりだった。


 四季の流れも、時の経過も拒否したのように。


 モノクロームだと、どんなに眩しい太陽の下で撮影したものであっても、どこか物悲しく感じられる。


 全ての色を失くした世界。
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