最後の恋の始め方
 ……。


 「昼間、行くと来るで誤解が生じたよね」


 「はい……」


 終わった後、シーツに包まりながら理恵は僕にもたれていた。


 「知ってる? 英語圏ではピークに達した際、comeを用いるんだよね」


 「山登りで頂上に到達した時ですか?」


 「え?」


 一瞬理恵のリアクションの意味が分からず、驚いたものの。


 「……今さら何も知らない子供のふりをしても、手遅れだよ」


 「えっ、解りません。何のことですか」


 「数分前に戻って、その瞬間を再現してあげようか?」


 「再現、」


 「僕にかき乱されて、感じすぎて狂いそうになっていた、あの時の理恵……」


 何度も体を重ねているにもかかわらず、時に見せる子供のようなあどけなさがもどかしくて、もっといじめたくなってしまう。


 「……ピークに達した時、I'm coming.って。日本ではgoだから逆だよね」


 いじめたい気持ちを抑えて、ベッドの中でgoとcomeの用法の指導を始めた。


 「そうなんですか」


 興味津々だとは思われたくないのか、理恵は気のない仕草で顔を背けた。


 「そういう場面、吹き替えじゃない時は映画などで台詞をよく聞いてごらん」


 「私、アダルトビデオなんて見たくありません」


 「そういうビデオじゃなくて。ただの洋画だよ洋画。ラブシーンで普通にcomeって言ってるから。意識して台詞を聞いてみれば……」


 「い、嫌です。私そんなの見たくありません」
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