最後の恋の始め方
 「山室さん、」


 「電話だとつい長電話になるから、今度ご飯食べながらでも。それに、佑典の話もしておきたいし」


 「佑典の」


 「今度預金の満期の件で、また事務所に行くことにはなっているけど」


 「あ、事務所は……」


 和仁さんの目に付くところで山室さんと交流すると、また刺激しかねないので、何とか避けたいと思った。


 「そうだよね。仕事の場だったらますます長話は無理だよね。やっぱり街で、一緒にご飯でも」


 ……この人は、大学時代の先輩。


 私の中で山室さんの存在が、それ以上になることはありえないという確固たる自信があったので。


 食事だけならと、会う約束を受け入れた。


 佑典が今、赴任先でどんな生活を送っているのか。


 気にならないといえば嘘だった。


 和仁さんからは「元気そうだよ」以上の回答は望めなかったので、山室さんからの情報が頼りだった。


 週末は私のカレンダーの予定欄は白紙。


 この週末も、和仁さんはディナーショー開催のため不在だったから……。
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