最後の恋の始め方
 ……シャワーを終えベッドに戻ると、理恵はまどろんでいた。


 身も心も疲れ果てるくらいに先ほどまで愛し合っていたのだから、無理もないのだけど。


 「もう寝た?」


 ベッドに潜り込み、眠りに落ちた理恵を再度抱きしめる。


 「髪が……濡れてます」


 「こうしていれば、その内乾くよ」


 バスルームからシャンプーやボディソープの香りを身にまとったまま、理恵と先ほどの行為をもう一度……。


 先ほど少し物足りなさを残して終えたのは、もう一度抱きたいと思っていたから。


 「またしばらく会えないから、今夜は……」


 「まだディナーショーが残ってますね」


 事務所の壁に掲げられた、月間予定のホワイトボード。


 月末までびっちり予定が埋まっている。


 こうして抱き合える夜も、わずかしかない。


 仕事柄仕方ないとはいえ、一人の夜が続くと理恵も心細いだろう。


 僕も理恵を毎晩抱きたいが……。


 「浮気したいって気力も失せるくらいに、もっと試してみようか」


 「また浮気だなんて・・・」


 まだ裸のまま横たわっていた理恵の上に、僕は身を寄せる。


 僕はどうしてもあの男のことを意識してしまう。


 佑典の時は、世間では彼氏として通っている関係だから我慢していたが、どこの馬の骨とも知れない男に理恵をかっさらわれるのだけは我慢ならない。
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