波音の回廊
 (清廉……)


 私は一人、清廉の部屋に取り残された。


 正確には軟禁状態。


 外でうろついている衛兵たちの許可なくしては、自由に外出もできない。


 清廉は、お堂に閉じ込められた。


 仏教や神道とはまた異なる、海の神という独特な信仰をしているこの島。


 海の神を祀るためのお堂が、皮肉にも清廉の監禁場所になってしまった。


 話を整理すると。


 当主が毒を盛られた。


 おそらくそれは、七重の仕業。


 だが七重は、それを清廉になすりつけた。


 どういうわけか清廉の書物庫に、毒草が入れられていた。


 それが証拠。


 だけどおかしい。


 昨日、そこには何もなかった。


 酒を飲み始める前、清廉が書物の一つを取り出して見せてくれた。


 もしもすでに毒草が入っていたのなら、その時気がついたはず。


 なのに……?
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