波音の回廊
 「終わったよ」


 私は侍女の背後に隠れるようにして、外に出た。


 「お役目ご苦労だった」


 「あの娘、泣き疲れて寝ているよ。しばらく放っておきなさい」


 「分かった」


 私はうつむき、前髪を垂らしていたので。


 衛兵たちも入れ替わりに気づかなかったようだ。


 清廉の部屋を出てからしばらくの間、衛兵たちの姿が見えなくなるまで無言で歩き続けた。


 明け方はあんなに晴れていたのに、空には雲が広がり、さっきよりもむしろ薄暗くなっていた。


 「そろそろ大丈夫だよ」


 侍女に言われ、私はようやく顔を上げた。


 「とりあえずじいの館に向かうよ。落ち着くまでそこに潜んでいるんだ」


 「分かりました」
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