波音の回廊
 私は侍女の案内で、じいの館に連れて来られた。


 「じいか私が戻ってくるまで、ここから動くんじゃないよ」


 「でも……」


 「若様が心配かい?」


 私は頷いた。


 「気持ちは分かるが、あんたが屋敷内をうろつきまわって、挙句捕らえられてしまい。あんたを人質に若様が自白を強要されでもしたら、それこそ最悪な結末だよ」


 「それだけは……!」


 避けなければいけなかった。


 「だったらここで、おとなしく待ってるんだ。じいもすでに活動を開始している。私も屋敷内で、情報を探ってくるから」


 「信じてお待ちしています」


 私にはそれしか方法がなかった。


 清廉の無実が証明されるのを願うしか。
< 160 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop