Sweet Lover
でも、その瞳は少し紅く、睡眠不足を物語っている。

枕もとの時計に目をやれば、時刻は朝の4時だった。

私は夢で見たのと同じように、響哉さんの腕にしがみついてみた。

響哉さんが目を見開く。

「コアラ、みたい?」

笑って聞きたかったのに。言葉にした途端涙が溢れてきた。ぎゅっと瞳を閉じると、涙が頬を伝って落ちて行く。

もう、戻らない遠い、幸せだった日々。
思い出したくなかった、のに。

「コアラよりずっと、マーサの方が可愛いよ」

響哉さんの声音も切なさを帯びていた。
< 174 / 746 >

この作品をシェア

pagetop