Sweet Lover
「キョー兄ちゃんって呼んでた頃のこと、夢で見たの。
 はっきり、見たの。
 忘れていたはずの、パパやママの顔も。
 ……ちゃんと、見えたの」

「マーサ……っ」

「……折角忘れていたのにっ」

響哉さんがぎゅうと私を抱きしめる。

「ごめんね、マーサ。
 全部、俺のせいだから。
 もし、泣いて気が済むなら、気が済むまで泣けばいい。
 怒って気が済むなら、好きなだけ怒って」

囁く声は、泣いている私の声よりもっと、潤んでいるようにも聞こえる。
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