Sweet Lover
「特に怪しい輩は見当たらなかった?」

言いよどむヘンリーの代わりに、俺が語尾をつける。

「ええ。
 婚約者を恨んでいる、という筋で当たってみたのですが、現在行方不明の方はいらっしゃいません」

「じゃあ、あれだな――」

俺はびしりと言った。

「他の理由で、誰かが彼女を恨んでる。
 ――かつ、この建物内部に居る――」

ヘンリーはさらに、表情を険しくした。

「お言葉ですが、こちらのマンションの住人はどなた様も問題の無い方ばかりです」

「では、その友人か――。その問題の無い方を脅した輩の仕業か――。
 あるいは」

俺はそこで言葉を切って立ち上がった。
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