Sweet Lover
「アンタは、記憶をなくしたんだろう?
 確かに、アンタの両親を交通事故に巻き込んだのは俺のオヤジだ」

ぐわぁん、と。
後頭部に怖ろしいほどの痛みが響く。

封印していた記憶が、放たれた痛みか。


雨の日。
楽しいドライブの途中。
赤信号のはずなのに突っ込んできたトラック。

耳が痛くなるような音。
身体に響く、衝撃。


パパとママの悲鳴。


――失われた、幸せな、日々。


「イヤァアアアっ」

そのつんざくような悲鳴が、自分から発せられたと気づいたのは、男のナイフが喉元につきつけられた後だった。
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