Sweet Lover
先生の言葉を、どう受け取ったのか。

紅潮していたオダの顔は、今度は見る見るうちに青ざめていった。

対照的に先生の紅い唇は、美しい弧を描いている。

「――だいたい、ここはどこなんだっ」

「ここ?
 ああ、君には分からないよね。
 ここは、須藤が昔、鳩を飼っていた場所さ。
 どっちみち、お前には関係ないことだ」

先生が投げ捨てるようにそう言った途端、オダはうっとりと建物の中を眺め始めた。

その視線の気色悪さときたらっ。

嘗め回すような目つきに、私は眩暈を覚えて、ドン、と音を立てて座り込んでしまったほどだ。 

それでもオダは、魅入られたように視線を逸らさない。

先生は、何事かを英語で監督に語りかけている。

OK.と、了承した後、監督はほぼ一方的に契約の打ち切りをオダに告げる。
オダは、それを理解したのかしてないのか、催眠術にでもかかったかのように、ただ一度、大きくこくりと頷いた。
< 695 / 746 >

この作品をシェア

pagetop