Sweet Lover
「悪いのは俺で、マーサじゃない」

声に驚いてドアを見ると、響哉さんが立っていた。

「――終わったの?」

「ちゃんと最後まで仕事はしたよ」

お陰で手が痛い、と、響哉さんは形の良い顔を崩して笑った。

「マーサ、真っ青だ。
 ほら、おいで」

抱き寄せられそうになって、私は慌てて逃げた。

「駄目なのっ。
 梨音に謝らないと……っ」

「だから、真朝のせいじゃないって言ってるじゃない。
 須藤さん。
 私も落ち着いたので、家まで送ってもらってもいいですか?」

「ああ、手配させよう」

響哉さんは内線でヘンリーを呼んだ。

私は、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、情けないことに、ただ、梨音を見送ることしか出来なかった。
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