砂の鎖

「浅野と里中がお前は悪くないと職員室に訴えに来たぞ。よく礼を言っておきなさい」


同じ内容だから間違いはないだろうと佐伯は頷いた。


「……麻紀と……真人が?」


私は目を丸くする。

麻紀はまだしも、真人が……?
あの日、罰ゲームで私に告白をしたと言っていた真人が、どうして……


「どんな理由があるにせよ二度と暴力で訴えようとするな。最低な行為には変わらないぞ。お前には何のためにその脳味噌と口があると思ってるんだ。それは反省しなさい」


厳しくそう言われ、私は肩を竦めた。

横井にも謝るようにと言われ、私は素直に頷いた。


「お前の様な親御さんがしっかりしている生徒は扱いやすいんだがな……」

「は? 私が?」


それから佐伯はぼやくようにそう言った。
余りにも言われ慣れない言葉に驚いて、私は思わず聞き返してしまった。

けなされるのは腹が立つが、褒められるのは驚いてしまう。

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