重ねた嘘、募る思い
「これで誤解は全部解けたかな」
上目遣いで申し訳なさそうにわたしの様子を窺う陽さんがなんだか年上には見えなかった。
再会した時の強引さの欠片もない。まるで別人に見えるのはわたしの気のせいなのだろうか。
「まだよ。たった今、のんを抱きしめて私の名前を呼んだってのは?」
うなずこうとした時、それを遮ったのは真麻だった。
そうだ、すっかり話が逸れていたけど陽さんは間違いなく真麻の名前を呼んだはず。聞き間違いなんかじゃない。
陽さんを見ると、眉間にシワを寄せて額に手を乗せ、「勘弁してくれ」と小さくつぶやいていた。
「真麻ちゃん、理由知ってるじゃん」
「私が知ってても意味ないでしょ、ちゃんとのんに説明してあげないと」
逡巡しながら「うー」っと小さくうめき声をあげる陽さんの顔が心底いやそうで、少し頬が赤いようにも見えた。熱が上がってきたのかもしれない。
だけど知りたかった。
真麻の名前を呼んでいないと言い張った陽さん、そしてその理由を知っている真麻。
ふたりが知っていることをわたしが知らないのはいやだった。ここまで来たら全部知りたい。
「わかった、話すよ。でも、引かないでよね」
躊躇いながらも恥ずかしそうに顔を隠す陽さんが不思議でならなかった。
そんなにも聞かせたくない内容なのか。でも真麻は知っているということは話したということだし。
ねっ、と陽さんに再び強い視線を向けられてうなずくしかなかった。