愛してるの代わりに
「……というわけなので、あまり慎吾くんと仲良くしないでくれると嬉しいんだけど」

うん、付き合ってるよ。

クラスメイトからの質問にさらりと慎吾が答えた日の放課後。

なぜか雛子はユリちゃんから呼び出しを受け、中庭のベンチに座っていた。




「え、と。慎くんはただの幼馴染なので、ユリちゃんが心配していることは何も起こらないと思うのですが……」

「それでもやっぱり、彼女に遠慮してほしいなと思うの」

「遠慮?」

「そ。雛子ちゃんと慎吾くんさ、時々一緒に帰ったりしてるでしょ?」

「それはたまたま帰る時間が一緒になって、帰る方向も一緒だから……」

「うん、わかってる。わかってるけどね、それを見て勘違いする人もいるじゃない?」

私がそうだったから。

そう言ってユリちゃんは夏真っ盛りの青空を見上げる。




美人は空を見上げるのも絵になるなあ。

そういや未来ちゃんもこの角度から見たときいつも美人だわ……。




「だから」

ユリちゃんの言葉にハッと我に返る。

「お願い。私、雛子ちゃんが慎吾くんと付き合っていないって知って、本当に嬉しかったの。慎吾くんが私の告白を受け入れてくれて、本当に嬉しかったの。私の幸せ、邪魔しないで……」

お願いします、と頭を下げるユリちゃんに、雛子はただ、うなずくことしかできなかった……。

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