愛してるの代わりに
入れ替わりに浴室へと行った慎吾を、髪を乾かしながら待つ。
広い空間、聞こえてくるのは雛子のドライヤーの音だけだ。
ゴオオッ、と力強く鳴り響くドライヤーの音が止まる頃、タイミングよく慎吾が入浴を終え雛子の前に現れた。
大人になって初めて見る、風呂上りの慎吾。
水も滴るいい男ってまさにこのこと……!
思わず固まる雛子に気付くはずもなく、慎吾は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し喉に流し込む。
ペットボトルを勢いよく机に置くと、少し大股で雛子の元へとやってきた。
ガッ、と肩に手をおかれ、思わず体が固まる。
「し、慎くん?」
「ごめん、雛。俺一番大事なこと忘れてた」
「大事なこと?」
「そう、大事なこと」
目の前の慎吾が大きく息を吸った。
ふう、と吸い込んだ息を大きく吐いた後、真っ直ぐな瞳が雛子に注がれる。